プレイレポ: Arma 3 クリエイター DLC - Global Mobilization

冷戦時代の東西ドイツ軍を実装するGlobal Mobilization

クリエイター DLC という Arma 3 の新たな試みも始まったことなので、 Global Mobilization のプレイレポをします。Global Mobilization はサードパーティの Vertexmacht が開発した新たな Arma 3 の DLC で、これまでの 2035 年という時代設定を離れ、1980 年代の東西ドイツを舞台としています。

大量のコンテンツで装甲車を使った歩兵戦闘や、歴史的背景を持つドイツのマップで戦車戦闘、点在する森林を使った待ち伏せ攻撃も可能。東西ドイツだけでなく、少しだけですがデンマーク軍も収録しています。冷戦期の軍事物はあまり興味が沸かなかったのですが、どのような出来なのか気になったのと、お布施半分 (収益は BI とサードパーティで分割、詳細は クリエイター DLC にて) で購入してみました。

Arma 3 Creator DLC: Global Mobilization - Cold War Germany Trailer - YouTube

冬バージョンもある Arma で最大のマップ

ドイツ北部に実在する場所を、1983 年当時のまま再現した Weferlingen は 419 平方キロメートルという Arma シリーズの中で最大のマップです。細かい起伏や小さないくつもの川など、ディテール部分も含めてどこを切り取っても申し分のない出来です。マップに置かれた中に入れる建物は全て新しく、破壊可能でその数は 30 以上。フェンスや井戸、ポストなど細かいオブジェクトも入れると数えきれないほどあり、これまで Arma 公式や MOD マップを遊んできた身からするとその作り込みはかなり新鮮味があります。

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例えば画像のような小さな柵は、板一枚だけを撃ち抜くとそこだけ倒れますし、建物にある時計はゲーム内時間と同期しています。ほぼ全ての建物に固有の残骸オブジェクトが用意され、一部の赤レンガの建物はごろごろと大きな瓦礫が崩れ落ちるようになっています。これらに加えて、冬バージョンもあるのですから、マップだけもかなりの質です。なお冬バージョンでは、雨が雪に、足音も雪を踏むザクザクという音に変わります。もうこれでお腹いっぱいになりそう。

淡々と進むキャンペーン

冷戦時代の東西ドイツ軍を実装するGlobal Mobilization

開発者の従軍経験を元に作製された、キャンペーン「State Scarlet」は東西ドイツ国内での激しい戦いを、西ドイツ軍即応歩兵部隊の下っ端、Klemmer 二等兵とレオパルド 1 戦車小隊長、Brandt 軍曹の視点から描いています。キャンペーンは冷戦期における本物の軍事行動はどのようにして行われるのか、というテーマになっていて基本的にミッション内で背景の説明はありません。敵がこうしていると思われるから、このような戦術的行動をするという簡潔なブリーフィングに留まっていて、状況を匂わすような無線のやり取りや、くだらない話等もおまけ程度ですから、かなりさっぱりとした印象を受け、ミッション後半までは説明不足感があります。何も分からないままとりあえず戦闘しているという下っ端の気分を味わえました。ドイツ語による吹き替えはかなり没入感を高めてくれますが、ローカライズは英語とドイツ語のみとなっていて、日本語は対応していません。

ミッション全体を通して当時の雰囲気をたっぷりと生み出すシンセサイザーの BGM が流れ続ける中、歩兵パートでは下っ端として集落の中で行う市街地戦や開けた場所での野戦、間伐処理された森林での戦闘を行いながら進んでいくのですが、現代の正規戦闘では当たり前となっているボディ アーマーが無く、その為すぐに死んでしまって緊張感があります。加えて市街地戦では死角から急に敵が出てくるので、引き締まったプレイ経験はこの DLC ならではでした。

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戦車パートでは時系列が歩兵パートと同じで、同時進行で反撃を与えていきます。ドイツ北部のかなり広い草原をレオパルド 1 戦車小隊長として、合計で 4 両の戦車を指揮しながら機甲戦闘をしなくてはいけないのですが AI 特有のスーパー AIM とリアクション タイムの短さはかなり頼りになります。が、それを全面に押し出して戦闘しないと到底、敵の戦車部隊に勝てないです。それに敵部隊はこちらの進行ルート上を待ち構えているように配置されているので、非常に難しく、何回も死んで敵のおおよその位置と数を把握してやっとクリアできるほどでした。

なお AI のスーパー AIM とリアクション タイムの短さは、指揮官であるプレイヤーが全ての車両に対して目標はこいつだと指示してから始めて活用できます。敵を見つけ、目標を指定するには指揮官の照準器から敵を見て割り当てられたキーを押すか、指揮メニューから指示する必要があります。こちらの AI が先に見つけ、勝手に撃てと命令してれば自ずと発砲してくれますが常にそうではないので、結局全ての戦闘で面倒を見るという作業があり、非常に煩わしいところも難易度を上げている印象を受けます。

冷戦時代の東西ドイツ軍を実装するGlobal Mobilization

Arma 3 の公式シナリオで機甲戦闘がいくつかありましたが、どれも戦車部隊の一部であり、命令をするのは自分の戦車だけ。後は他の味方 AI が勝手にやってくれるので非常にプレイがしやすかったのと比べてみると、難易度が高い印象を受けます。

基本的に淡々と進むのですが他のゲームに見られるような嘘くさい演出が無く、銃撃戦や森林での待ち伏せ、防衛戦闘などバリエーションのある戦いもでき、軍隊の歯車として振り回されるのは楽しめました。戦車パートでは一本道ではなく、ある程度は自分でルートを決定できますし、またミッションもそれを考慮しているという点、最後のネタばらしを含めると、キャンペーンはよく出来ていると思います。

質を兼ね備えた十分な銃と車両

キャンペーンでは全て登場しない銃や車両は数が多かったのでじっくりと見てみましたが、その数と質は一品です。西ドイツ軍の車両にはレオパルド 1 主力戦車シリーズを始め M113 シリーズ、Tpz 1 シリーズ、トラック各種、K125 バイクがあり、東ドイツ軍には T-55 主力戦車、BMP-1 シリーズ、BTR-60 シリーズ、トラック各種とミッションづくりやゲームでの使用に十分使えるほどの量があります。装甲車両の内装部分にある計器類といった細かい部分まで品質に一貫性があります。そしてそれら全てが 1 から製作されており、Arma 3 基準の品質であるといっても過言ではありません。

発売当初はヘリコプターを始めとする航空機は一切ありません。ただし今後のアップデートにより CH-53G と Bo-105 が追加予定と開発者が明言していることから、期待できます。なお今では普通となってしまった、戦車の内装部分ですが作製にはかなりの時間がかかりますし、そこまで求めてしまうと車両の数も減ってしまうと思うので、あれば最高ですが、無くても理解できる部分だと思います。

冷戦時代の東西ドイツ軍を実装するGlobal Mobilization

車両は外観のカスタマイズ製が高く、車体の迷彩は森林迷彩と冬季迷彩に加えて、砂漠迷彩や森林と冬季迷彩が混じった仕様など数種類が用意。マーキングされた紋章や作戦名、部隊記号、戦術記号、所属国を全てユーザーが好きに設定できるのは、こだわりを感じさせます。なお一部の車両にはいくつかギミックがあるようですが、プレイヤーはゲーム内で何も操作できません。そういった動作をできるようにしていないのは残念です。

銃にあっては、歩兵が使える一通りの武器を実装。制式銃である G3 シリーズ、AK シリーズ、対戦車ランチャーなど 21 種類がありますが狙撃銃や迫撃砲が増えると魅力的になったでしょう。ただどの武器もオリジナルの銃声と、武器の部品と連動しているリロード アニメーションが用意されており、MG3 機関銃はミッション内でも使えるのならば使いたいほどです。

まとめ

冷戦という時代設定を好むなら購入しても損はないと思います。他にはない車両や優れたマップからなるコンテンツ量やその品質は DLC として成り立つレベルです。キャンペーンは日本語が無いものの、ドイツ語の吹き替えや現実的な作戦を元にしたミッション群は Arma ならではの体験でした。ただ例に漏れず、AI に苦しめられる部分がいくつか見受けられます。そしてなまじ品質が高い分、正しく表示されないテクスチャ等、小さなバグが悪目立ちしているのが惜しいです。

Global Mobilization は Steam と Bohemia 公式ストアで販売中です。


クリエイター DLC の話をします。プレイレポとは関係ありません。

クリエイター DLC は試行錯誤中

Bohemia Interactive が新たに始めたクリエイター DLC は、主要な開発が終了した Arma 3 シリーズを更に発展させ、なおかつトップティア、つまりプロ並みの MOD 開発者へそれ相応の対価を還元するという試みで、それ自体は素晴らしいでしょう。専属の開発人員も少ない中でゲームをコミュニティ、そしてサードパーティと協同して発展させ続ける取り組みは驚きます。ただ Vertexmacht の一人が Arma Discord の公開チャンネルで投稿した発言によると、BI は収益の 50% (Steam 経由では 35%) が約束された後はゲーム エンジンのバグを修正するアップデートを行うと DLC の開発元 Vertexmacht と取り決めをしたようですが実施されなかったり、開発に使われている内製ツールは一切提供していません。これではサードパーティも満足に開発を出来ないのではないでしょうか。

ローカライズも BI が管理していて、本来ならばフランス語も追加される予定でしたがありません。これってかなり損してると思います。そしてこれまでの公式 DLC のように、所有者だけが参加権利を持つベータを実施するべきでした。BI による品質管理はあれど、全ての問題 (特に前述した小さなバグ) を洗い出すのは難しいでしょう。

前述の投稿に関して、BI の PR マネージャーは Reddit にて、Vertexmacht との関係は良好であり、現在はクリエイター DLC の評価をしていると投稿していることから、今回を教訓にこのクリエイター DLC を中止ではなく続けて欲しいと願います。

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